_trip 臥龍に向けて悪路をバスで行く('07年11月中国旅)

11月19日(一)

臥龍行きのバスが出ている
茶店子バスターミナルの中へ入ると、
その奥からバスに乗るようになっているようで
行き先の看板が書かれた前に何台もバスが並んでいた。
臥龍行を探して奥へ、奥へ。

あったのはマイクロバスぐらいの小さいやつ。
運転手のおっちゃんにチケットを見せて乗り込んだ。
一応指定席なのだが、完全無視。
我らの座席=最前列にはすでに誰かが座っていた。
チケットに書かれた番号を見せると、
間違えていた人もしぶしぶ席を譲ってくれようとしたが
車内を見たところ、他の席もたっぷり空いているし、
そんな状態で友達と並んで狭々と座ることもかなかろうと
運転手のおっちゃんに言って、後ろの方の席へ。
おっちゃんや、先に座っていたお客さんの反応を見るに、
前方の席に座れる権利を捨てて
後方に行くなんて変わってるねーみたいな雰囲気だった。
中国ではどうも前の席が人気のよう。

乗客は全部で10人ほど。
さっそく私たちの2列前に座っていた
彫りの深い40歳ぐらいのおっさんがタバコを吸い出した。
うわー、出たよ、出た、噂のノンモラル中国人!!
禁煙って書いてるのが見えんのか、ボケ!!
こんなところでタバコなんか吸われたら
100%車酔いするやんけ!!

友人と怒りの表情で顔を見合わせたら、
煙を感知した運転手のおっちゃんが
「タバコあかんで」的なことをそのおっさんに言い、
なんとかやめてさせてくれた。
良かったー、そういうルールはちゃんとしているみたい。
安心した。これで臥龍までの4時間がんばれる。

ほっとした私たちだったが、
この後、このノンモラルおっさんのノンモラル行動に
幾度となく眉をひそめさせられることになる。

いよいよバスが臥龍に向けて出発。
出発してすぐは道路もきちんと舗装されていて快適。
ほどなくして、バスはよくわからない駐車場に止まった。
いきなりトイレ休憩かと思ったら、
「みんな降りて」というようなことを言っている。
なに? 故障?
わけも分からないままマイクロバスを降り、
横に停まっていたまあまあ大きめのバスに乗り換えさせられた。
乗り換えたと同時に運転手が変わっていた。
いったい何が起きたんだ? いまだ不明。

再び臥龍への道をひた走る。
道路脇の景色がびっくりするほど変わらない。
田畑が続いてるとかそういうのではなくて
石材屋が延々と軒を連ねているのだ。
どこまで行っても石材屋。規模がハンパじゃない。
数キロにわたる石材屋ロード。
はじめは各店の軒先に無造作に置かれている、
おそらく店主自慢の石像作品
(仏像とかフェニックスとかアニメキャラとか)を
眺めていたけど、だんだん飽きて知らない間に寝ていた。

次に起きたときは今まで走っていた大きな舗装された道から
小脇の道へ曲がるところだった。
1時間ぐらい走ったんだろうか。
いよいよ山道へ入るのを本能的に察知したのかなんなのか
びしっと目が覚めた。

少し行くと川が見えてきた。川の名前は知らない。
道は悪路。舗装されていないんじゃなくて、
舗装されている途中で、たいがい片側しか進めない。
その走行できる“片側”がこれから舗装される方なので悪路なのだ。
舗装された方には掘り起こしたときの
砂利やら重機やら車やらで通行できない。
残り3時間は延々とこんな道が続いた。

途中、バスは幾度か停まった。
バス停があるような感じではないのに停まって
人が降りて、逆に乗ってきたりもする。
少数民族のおばちゃんグループとかが
農作物を山盛り持ち込んできたりとか。
どういうルールで行われているのかいまいち分からない。

ちなみにさっきのノンモラルおっさんは何をしていたか。
まず私の友人が中国語を喋れると察知して何やら話しかける
(方言がきつくて何を言ってるか分からなかったらしいけど)、
自分のシートのところでマイ水筒のお茶(※1)を大量にこぼす、
拭くものがないのでびしょびしょにしたまま自分だけ席を替わる、
シートのカバーで濡れた手を拭く、
窓の外にゴミを捨てる、
飲みきった後の茶葉を捨てる(※1)、
ついには再びタバコまで!
これにはさすがにカチンときて、
「吸うなら窓を全開にしろ」とゼスチャーで。
しかしまたも運転手のおっちゃんの煙センサーにより
すぐに消さされるはめに。ざまーみろだ。
ただそのタバコは当然のように窓の外から捨てられた。

注釈
※1 中国人の旅には水筒が欠かせません。
そこに茶葉を入れてお湯を入れる。
お湯はいろんなスポットに置かれていて、水筒に足す。
私もスタバのタンブラーを携帯していた。

※2 友人に聞くところによると、中国人の感覚として
ゴミを外に捨ててもOK的なことがあるらしい。
これはノンモラルおっさんだけでなく、
少数民族おばちゃんグループでさえやっていた。
例えばレストランに行くとテーブルの周りは
唐揚げの骨やら果物の皮やらですさまじく汚い。
それを前提としているから
あらかじめビニールなどが敷かれている。
でもやっぱり窓の外からゴミ
(しかもビニールとか土に還らないもの)を
捨てる姿を見るのは気分的にかなりきつかった。

3時間ほど走ったところで
いよいよトイレに行きたくなってきた。
尿意の遠さには自信がある私だけれど、
一度感じてしまうともうどうにもならぬ、行かねばならぬ。
もちろん待っているのは噂に名高い“ニーハオトイレ”だ。

でもこうなるとどうでもいい、致し方ない。
これまでのバス内の雰囲気的に、運転手のおっちゃんに
トイレに行きたい旨を伝えるのが一番早かろうと
一番前まで行って、超つたない中国語で
「我想去洗手間(トイレに行きたい)」と伝えてみた。
意味が伝わってるかは不明だったけど、
運転手のおっちゃんも意図はくんでくれた風だったので
自分の席に戻って待機。
するとほどなく売店みたいなところで停まってくれた。
売店の後ろにある丘の途中に
コンクリート造りの小屋に
「厠」のペンキ文字を見つけ一目散にダッシュ。

中に入ると電気はない。
4畳半ぐらいの広さでひとつの壁際にトイレがあった。
噂通り、水路だけのニーハオトイレ。
その水路をまたいで用を足すシステム。
仕切り代わりの壁はあるが微妙に低い。
前後はなんとか隠れるが、当然ながら横は丸見え。
でもここの良かったところは
水路に常時ちろちろと水が流れているせいか、
汚物で見るも無惨、みたいなのではなかったことだ。

一番奥の壁の裏でそそくさと用を足し、バスへ戻る。
田舎育ちだからか、思ったよりも平気だった。
(うちの実家はいまだに水洗式じゃないし。)
ま、一人だったからというのもあるかもね。

臥龍まであとどれくらいかかるんだろう。
台湾のときと同じく、途中のアナウンスが一切ない。
聞くにも私の語学力では聞けない。
頼りの友人はこのガタガタ悪路にして爆睡。すごい。

再びバスが動き出した。
30、40分ぐらいすると
窓の外に明らかにパンダの何かしらの施設が。
臥龍大熊猫保護中心…て書いてたような。
私たちが行くのはここ? ここのこと?
熊猫山荘なるものも建っている。
多分ここだ、と思ったけど確証がない。
誰にも確認できない。
もしここで降りて違ってたら足がなくなる。
一応このバスは臥龍行きだし、
最後まで乗っていても多分大丈夫、
そこからタクシーで移動すりゃいいの結果になった。

20分ほどしてまたまた
パンダがあしらわれた施設が目に留まった。
でもそれを横目にバスはぐんぐん進む。
あれ? ほんまにこのバス、どこまで行くの?
と思ったら、あるおうちの前で停まった。
例のノンモラルおっさんが降りた。
バスのトランクから大量の荷物を降ろしていた。
まとめて買い出しに行っているんだろう、きっと。
すべての荷物を下ろしたところでバスは出発、
と思ったらバックし始めた。

バック、バック、バックして、
さっきのパンダがあしらわれた施設に近い民宿前に到着。
どうやらここが終点の模様。
あのノンモラルおっさん、
着くちょっと前に運転手のおっちゃんと
何やら密談をしていたと思ったら、これか!
家の前までバス行ってよ交渉か!
日本だったら絶対あり得ない遠回り。
これも中国ならではって感じかな。全然いいけどね。

終点はてっきり比較的大きな町かと思ったら
小さな民宿前。タクシーもない。どうすんねん!!
民宿のおっちゃんらしき人が何やら話しかけてきたけど
私たちが泊まるのはここじゃない。
不安に駆られながらも
とりあえずパンダのあしらわれた施設の方へ戻ってみた。
整備された風の場所、だけど人っこひとりいない。

パンダをあしらった施設というのはパンダ博物館らしかった。
しかしクローズ。完全に路頭に迷った。

どうすることもできなくなり、
横にあった公的施設っぽいところへ。
そこでなんとか人を発見、かくかくしかじかと事情を話す。
友人曰く、とにかく方言がきつくて
何を言ってるかわからないとのこと。
しかもそのおばちゃんはハスキーボイスでさらに聞き取りにくい。
それでもなんとか聞き取ったところによると
何やら40元出せば車で送ってくれるとのこと。
まあ仕方ないかと承諾し、車の到着を待った。

待っている間、警備室みたいなところに入れてもらって
電熱線に当たり暖をとりながら待機。
スタッフの警備員&おばちゃんたちは
楽しげに水筒のお茶を飲んでいたので
私も自分のタンブラーを取り出し、
ずうずうしくお茶をくれと言ってみた。
お湯だけくれた。茶葉が入っていないので白湯。
お湯を入れてもらったと思ったらタンブラーのふたが行方不明。
探しまわって発見。そんなことであっという間に時間が経った。

数分後、車が到着。
タクシーかと思ったら、普通の車だった。
大丈夫かと思いながら車に乗り込み、
運転手のおっちゃんと会話。
どうやらホテルの人らしい。
ホテルの送迎なのにお金とるんか。そうか。
昨日も日本人を迎えに来たよ、とのこと。
5分ぐらい走ったところでホテルに到着。
まさにさっき通り過ぎたあの熊猫山荘だった。
やっぱりあそこで降りてりゃ良かったんか。

やっとのことでホテルにチェックイン。
シーズンオフだからか予約なしでも余裕だった。

つづく

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